高田机上の著書『できない自分を認める力』
『できない自分を認める力 マイナス思考でも人生はうまくいく! 』
友末亮三 高田机上 共著
ビジネス書(自己啓発)
発売日:2017年6月1日
発行:実業之日本社
ISBN:978-4408456140
著者の1人である高田机上です。この本はプラス思考が合わない人向けの、マイナス思考のままでストレスを減らしたり、マイナス思考のままで人生を前向きに生きるための本です。プラス思考になりたいのになれない方、マイナス思考で苦しんでいる方に向けて書いています。逆にプラス思考でうまくいっている方にはあまり参考にはならないかもしれませんが、周りで苦しんでいる方がいるのならこの本を薦めてあげていただきたいです。
このページでは著者自ら本書の紹介をいたします。
はじめに
仕事や生活がうまくいかないとき、「その原因は自分がマイナス思考だから」と考える人が、増えています。そうした人たちは、プラス思考の自己啓発本を読みます。そして、友人に励まされ、ネットのポジティブポエムに感化され、熱いメッセージの書かれた日めくりカレンダーに元気をもらい、プラス思考に生まれ変わり(生まれ変わったと思い)、新たなスタートを切ります。しかし、時間が経つとまた、マイナス思考に戻ってしまいます。
それでは、なぜプラス思考が身につかないのでしょうか。結論から言えば、そもそも、その人にはプラス思考が合わないからです。しかし、プラス思考になれないからといって、すべてをあきらめる必要はありません。なぜプラス思考が自分に合わないのか、マイナス思考で考え方を改善させる方法はないのか、一度じっくり考えることが必要です。
「はじめに」の全文はAmazonの商品ページに掲載されています。
僕は「松●修造のカレンダーに元気をもらい」で行きたかったのですが、編集者に「熱いメッセージの書かれた日めくりカレンダー」に直されました。
第1章 プラス思考の弊害
一般的にプラス思考が良いものとされマイナス思考が悪いものとされています。
この章ではプラス思考が良いことばかりなのか、マイナス思考が悪いことばかりなのか、ということについて書いています。良いはずのプラス思考がプレッシャーに変わり、自分を苦しめてしまうこともあります。そしてそのプレッシャーというのは、他人から与えられたものではなく自分で作り出したものなのです。
誰にでも肩書きや立場がありますが、立場を強く意識しすぎると、プラス思考が強迫観念に変わることがあるのです。
「成功したい」が「失敗してはいけない」に変わる
「楽しんでやりたい」が「弱音を吐いてはいけない」に変わる
「期待に応えたい」が「責任や重圧」に変わる
「幸せになりたい」が「幸せにならなきゃいけない」に変わる
「結婚したい」が「結婚しなきゃ」に変わる
気がつけば、プラス思考を無理やり演じている自分がいるのです。さらに、次のような思考が入り込んでくると、事態は深刻さを増していきます。
落ち込んでいてはいけない
成長し続けなくてはいけない
問題や悩みを解決しなくてはいけない
自分の弱さを克服して強くならないといけない
第2章 なぜプラス思考が合わないのか
プラス思考自体がダメなのではなく、合わない人がいる。その人はなぜ合わないのか、という章です。
もちろんマイナス思考よりプラス思考で考えるほうがうまくいきます。自然にプラス思考で考えることができるようになるのが理想です。ですがそれができないし合わない人もいるのです。
プラス思考で成功する人は、確かにいます。そして人々は、プラス思考の本に書かれていることを鵜呑みにしがちです。「プラス思考だから成功したんだな」「プラス思考は万能で成功する!」と考えてしまいます。
一方、プラス思考で失敗した人は星の数ほどいるはずですが、失敗した人の話は本にはなりません。ですからその存在も知られません。本当はそういう人たちの話にも、目を向けるべき点がたくさんあるのに、です。
ポジティブなアドバイスの多くが、相手の内面や自分の内面に向き合っていない、ということです。
まず相手にアドバイスするとき。ほとんどの場合、相手の内面深くにまでは踏み込んでいません。相手とつらさを共有しているわけではありませんから、誰に対しても言えますし、それほど深い考えもなしに手軽に言うことができます。
次に自分で自分に言い聞かせるとき。この場合でも自分の内面に誠実に向き合わず、悩みや弱さを棚上げしたり、自分に嘘をついたりすることがあります。そのため安易にプラス思考に逃げてしまい、表面的な解決策の域から抜け出せなくなります。
また安易なプラス思考は楽ですが、安易なマイナス思考も楽です。
なぜならある物事に取り組むとき、「できない」と安易に決めつければ、しなくてよくなるわけですから、それは楽に違いありません。
安易なマイナス思考は「自分はダメだ。無理だ」で終わり、安易なプラス思考は「自分はできる」で終わります。どちらも勝手な決めつけで終わって、実際には何もしない。
嫌なものを嫌だと思っていいのです。嫌いな人を嫌いだと思っていいのです。自分の意見を持っていいのです。大切なのは自分をごまかさないこと、自分にウソをつかないことです。強いふりをしなくてもいいし、他人からの評価を気にする必要もありません。
そして人間は思考を止めることはできません。マイナスなことを考えるなといってもそれは無理な話です。わざわざ不安になることを考えてしまい、そして眠れなくなるのが人間なのです。
マイナス思考を消すことはできません。それは自分の性格や個性だと受け入れるべきです。
マイナス思考を克服した人は世の中にたくさんいますが、それはマイナス思考を消したのではなく、マイナス思考とうまく付き合えるようになった、と捉えるべきです。
そうです。別に生まれ変わらなくていいのです。変えるのは今の自分の気の持ちようだけなのです。
第3章 4つの思考法
プラス思考にも「良い」「悪い」の2種類があり、マイナス思考にも「良い」「悪い」の2種類があります。
積極的プラス思考「面白い。楽しい」
消極的プラス思考「しっかりしなきゃ」
消極的マイナス思考「自分には無理だ」
積極的マイナス思考「自分はダメでいい」
積極的マイナス思考
消極的マイナス思考にとどまらず、さらに落ち込んで、どん底まで落ちてしまった状態の思考法です。
しかし、だからといって最悪の思考法かというと、そうとは限りません。人間は誰もが不思議な力を持っており、どん底にとどまってしまうことはあり得ないのです。落ちるところまで落ちると、あきらめや開き直りが混在する葛藤を経て、きっかけさえつかめば、一気に積極的プラス思考へと転化していきます。
この4つに分類した思考法ですが、一般的には誰でもこのうちひとつの思考法を中心的に用いる傾向があります。しかし、思考法は状況によって刻々と変わる場合もあるので、常に同じ思考法が中心とは限りません。
たとえば、「自分も積極的マイナス思考だったときがあるな」というように感じられることは、どの人にもあるはずです。思考というものは、完全に分類しようとすると無理が生じるものなのです。
それゆえ、思考法が混在しているのが人間、という見方も必要だと考えます。
第4章 積極的マイナス思考の概要
この章では友末先生がプロを目指す女子のテニス選手に宛てた手紙を紹介します。
己の無力さに涙したって、全然かまわない。悲しいときは悲しめばよい。本当の強さや自然に溢れ出る優しさは、どん底を経験して初めて身につくものだとすると、マイナス思考も捨てたものじゃない。今、苦しんでいる君に「がんばれよ」「元気出せよ」と、気安く声をかけない理由はここにあるのです。
メンタル面の指導というと、いつもプラス思考が前面に出てきますが、マイナス思考(積極的マイナス思考)にも目を向けて欲しいということです。
ボクは君の心の中に「テニスが楽しい」という感情が、自然に湧き上がってくるのを待っています。
それはどん底の中であがいた人間だけが感じる「本当の歓び」といってもよいでしょう。そしてその歓びが感謝の気持ちに変わっていったとき、君の表情は以前よりももっともっと、明るいものになるでしょう。
時代の変化により、歌の歌詞や作家の文章にも、プラス思考を推奨するものからマイナス思考を受け入れる物が増えてきている、という指摘をしています。
積極的マイナス思考の講義を受けた大学生たちの意見や感想を紹介しています。
積極的マイナス思考の身につけ方を紹介しています。
第5章 思考の男女差
男女でストレスに感じることの違いと、その対処法の違いを紹介しています。
第6章 積極的マイナス思考を用いて問題解決
仕事・スポーツ・生活の悩みや不安に対して、積極的マイナス思考を用いて解決策を提示するQ&Aです。
積極的マイナス思考の考え方が顕著に表れているQ&Aを1つ引用します。
──試合中に「またミスしてしまった」「自分はダメだ」と思ってしまう。
これは試合のときに誰もが思うことです。そう思うのが自然なことですから、そう思わない努力をする必要はありません。
メンタルトレーニングの本には、そうしたマイナスなことを思うとプレーに支障が出る、「自分は強い」と信じよう、なんてことが書いてありますが、こうしたカラ元気に意味はありません。そのうち、思ってはいけないのに思ってしまう→さらにストレスが大きくなる、というネガティブサイクルにはまってしまうのがオチです。
プロでも何度もミスをすれば、「やっぱりダメだなぁ」と感じます。でもそれを受け入れるから、気持ちの切り替えが早いのです。「ダメだなぁ。しゃ~ないわ。でもまたやってみるか」という緊張感のない感覚が、ストレスをどこかに追いやってしまうのです。
そんなとき、「自分はダメじゃない。なんとかできる」というように、自分のダメさ加減を認めないで先に進もうとすると、状況はさらに悪くなってしまいます。ダメな自分を認めるのは、積極的マイナス思考のポイントのひとつで、強いからできること、まわりが見えているからこそできることです。それを認めようとしないのは、自分とちゃんと向き合っていない、単に自分をごまかしているにすぎない、ということなのです。
第7章 心理学と積極的マイナス思考
安田女子大学の心理学部心理学科教授である藤沢敏幸氏にお話を伺いました。
友末:積極的マイナス思考では「自分と向き合う」「現実を受け入れる」ということをテーマにしているんですが、藤沢先生のカウンセリングではどうでしょうか?
藤沢:それはカウンセリングの基本ですね。たとえば「あなたは一生懸命いろいろやろうとしているけど、うまくいかないよね」というところから始めます。
友末:そのアプローチは、まったく積極的マイナス思考と同じですね。
藤沢:「なんでそんなにうまくいかないんだろうね」と一緒に考えます。そうすると変なプラス思考が見つかったりします。たとえば「自分の限度を超えてがんばろうとしていました」とか。カウンセリングではそれは自己探求ですから。本人が自分を探求していくのを援助していく。カウンセリングを受けにくる方は、だいたいマイナス思考ですよ。
藤沢:最近よくあるのは、大学の卒業生が就職して3年目ぐらいで、仕事を辞めたいと相談にくるんです。理由を聞いたら、毎朝出勤するとき職場が近づいてきたら吐き気がする。ひどい場合はバァーっと吐いてしまうと言うんです。考える前に体に先に反応が起こるんですね。それでも「がんばって仕事行かなきゃいけない」と3~4カ月仕事に通うんですが、結局仕事に行けなくなってしまうんです。それで病院に駆け込むと「軽いうつ病ですね」と言われる。私は彼らに「転職も考えたほうがいいよ」と言います。仕事を辞める、辞めないといった話はよくしますね。
友末:体が危険を感じて、出勤を拒否するんですね。
藤沢:頭と体、どちらを信じたらいいかといったら、体だろうねという話になるわけです。そういう意味では、体と頭は別々に切り離して考えたほうがいいと思います。頭ではまだ大丈夫だと思っていても体が拒否しているなら、それは深刻な問題であると認めたほうがいいでしょう。
友末:うつ病の方に積極的マイナス思考は、有効だと思われますか?
藤沢:有効でしょう。自分と向き合って問題点に気づき、「じゃあどうしようか」と前向きな行動を促すのは、カウンセリングと同じ手法だと思います。やはりそこを考えないと。「元気出しなさい」と言っても仕方ないですから。
さらにうつ病から立ち直ることができた女性から、お話を伺いました。この女性が積極的マイナス思考を用いて立ち直れたということではありませんが、うつ病やマイナス思考で苦しむ方にとって、大きなヒントになると思います。
──うつ病や落ちこんでいる人に、どんな声をかけてあげればいいと思いますか?
アドバイスよりも、まわりの人はその人の話を聞いてあげるだけでいいと思います。自分のつらさをわかってもらいたい気持ちはありますが、他人は自分と同じ経験をしていないので、つらさはわかりようがないものです。でも話を聞いてもらえるだけでも違います。それはうれしいと思いますよ。やっぱり自分ひとりじゃないことは心強いですから。
──うつ病や落ち込みから立ち直るには、時間が必要だと思いますか?
そうですね、時間は必要だと思います。そして休めばいいと思います。悩みは解決できなくても、やり過ごすことはできます。私はそう実感しました。悩みの大きさは変わらなくても、自分の感じ方は変わります。
──落ち込んでいるときには、何をするのがいいでしょうか?
落ち込むときは、しっかり落ち込んだほうがいいと思います。出会った悲しみには向き合ったほうがいいし、深く考えられます。人間は他人の悲しみには向き合えませんから、自分の悲しみと向き合えるのは自分だけです。
──「不安なことを考えて眠れない」という人に対しては、どうアドバイスしますか?
眠れないときは「早く寝なきゃ」ではなく「眠れないんだなー」と考えるのが良いと思います。不安に対しても「あぁ、そうですか」と考えられれば、少しは楽になります。
第8章 積極的ワリキリ思考
この章は高田机上が1人で自由に書かせてもらいました。
積極的マイナス思考は、主に自分自身の内的ストレスに対して「自分と向き合う」「現実を受け入れる」ということをテーマにしていますが、積極的ワリキリ思考は、主に他人や事象からの外的ストレスに対して「あてにしない」「考えない」ということをテーマにしています。
積極的ワリキリ思考では「それはありうること」「避けようがないこと」「自分の力ではどうしようもないこと」と意識してワリキります。また、他人に対して期待しない、あてにしない、人間はミスをするものだとワリキリます。ほかにも「予定とは変わるものだ」「運が良い悪いなどなく、みんな平等に運が悪い」「この世には不思議なことなど何もない」ということを前提にしておきます。
朝起きたときから、今日はこんなことをワリキるだろうな、と構えておくといいことが3つあります。
「捨てる時間」「捨てるお金」「他人からもらうストレス」です。
仕事で、とくに他人に対して、ストレスを感じることはよくあることだと思います。部下や上司に対して「こうしてくれればいいのに」「これぐらいできないのか」といった不満を感じることは多いでしょう。
それではなぜ、ストレスを感じるのでしょうか。それは、相手にできることを期待しているからです。
たとえば、相手が小学生だったら、仕事ができなくても、常識を知らなくても、ストレスは感じないはずです。ということは、私たちは無意識に「大人なんだからこれぐらいはできるだろう」と相手に期待しているのです。勝手に期待して、そして裏切られた気分になるのです。ということは、相手に期待しなければストレスにはならないということです。
①他人の能力をあてにしない
②他人の良心をあてにしない
③他人の常識をあてにしない
④他人の体調をあてにしない
⑤他人の言葉をあてにしない
自分の力ではどうしようもないことは、考えないようにします。ほかにも、考えてもどうしようもないことは、考えないようにします。過去の嫌なことを考えない。将来の不安を過度に考えない。他人と対抗したり、競争しない。見栄を張らない。
たくさん引用をさせていただきましたが、本の内容は分かっていただけたと思います。
プラス思考になりたいのになれない方、マイナス思考で苦しんでいる方におすすめいたします。
できない自分を認める力 マイナス思考でも人生はうまくいく! [ 友末亮三 ]
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